【質問】認知症の方が相続人である遺産分割
自宅で療養看護をしていた父が亡くなりました。相続人は、母と子2人の3人となりますが父は遺言書を残しておらず、また母は数年前から認知症を発症し施設に入所ています。父の遺産は、自宅マンションと父の実家(空き家)である不動産と現預金等です。父の実家(空き家)不動産については、相続後売却をしたいと思っています。遺産分割協議をどのように進めたらよいものか教えてください。
遺産分割協議のルールは【全員参加・全員合意】
「遺言書」がない場合は、相続人全員が集まって、遺産を誰にどう分けるかを話し合います。これを「遺産分割協議」と言います。遺産分割協議のルールは、【全員参加・全員合意】です。相続人3人のうち誰か1人が協議の内容に反対をしていれば、協議は纏まりません。
2人が合意していても、多数決で決めるというわけにはいかないのです。また、今回のケースのように相続人の中に認知症で判断能力を欠く方がいる場合には、その方は有効な法律行為を行うことができません。つまり、相続手続きにおいて必要な遺産分割協議を行うことができないということです。
■認知症の方がいる場合の相続方法
1.遺言書を残してもらい遺言書通りに相続
2.各財産を法定相続分に沿って相続
3.成年後見制度を利用し後見人を含め協議
今回のケースでは、生前に遺言書を作成していなかったため、2又は3の選択ということになります。遺言書があれば、遺志を尊重することもできますし、他の2つより簡単な方法ですので、生前のうちに遺言書の準備をお勧めします。
2.法定相続分で相続する
法定相続分通りに相続するのであれば、遺産分割協議書がなくても相続手続きが可能です。不動産等のようにそのままでは分けることができない財産は、法定相続分で共有することになり、現預金等のように分けられる財産は法定相続分に沿って分け相続することになります。
※今回のケース、法定相続分通りに相続すると、自宅マンションも、父の実家不動産も、それぞれ共有状態(母:1/2・子1/4・子1/4)になり、法定相続分通りに相続した父の実家不動産を売却したくても認知症である母を含めた共有者全員の合意が必要で、代理人である後見人は裁判所の売却許可を取り付ける必要もあり、簡単に売却ができません。
3.成年後見制度を利用する
認知症の方の代理人となる成年後見人を裁判所に選任してもらえば、認知症である母親本人の代わりに遺産分割協議に参加してもらい遺産分割することができます。ただし、選任された成年後見人が遺産分割協議を行う際には、認知症の相続人が本来持っている法定相続分を確保する必要があります。
(成年後見制度を使うデメリット)
家族を成年後見人候補者として希望を出すことはできるが、資産状況によって裁判所が外部の弁護士など専門家を選任することもあり、その場合、成年後見人対する報酬が発生する。また、一度選任されると、遺産分割協議が終わっても、後見人としての役目は基本的に亡くなるまで続くことになります。
※今回のケース、母の後見人に子供がなれた(すでになっていた)場合でも、父の遺産分割協議においては裁判所に別途「特別代理人」に選任を申し立てる必要があります。父の相続人おいては、母も子も父の同じ相続人の立場でになってしまうからです。特別代理人は、遺産分割協議と利害関係のない親族(叔父、いとこなど)を候補者とすることも可能ですが、専門家など第三者を候補者とすることが多いです。
認知症の方がいる場合の相続手続きは、いずれの方法を選択するにしても簡単ではありません。生前のうちにできる準備としては、「遺言」がベストであることは言うまでもありませんが、ご家族構成や財産状況、健康状態により、考えられる準備・対策は十人十色です。当センターでは、様々なケースを士業・専門家が連携してワンストップでご相談対応しております。
まずは、お気軽に当センターへご相談ください。
(相続相談横浜、不動産相談横浜)