遺言のこと
1.遺言でできること
お持ちの財産は、いずれはご自身の手から離れ、相続人の方へ引き継がれます。 遺産相続は、誰もが円満に行われることを願います。その一つの方法として遺言 があります。遺言によって、ご自身の財産をご自身の考えで分けるとともに、家族 への想いをのこすことができます。
【遺言でできること】
(1)財産の処分に関すること(お世話になった人に財産を相続させたいなど)
(2)相続に関すること(法定相続分と異なる割合の指定や遺言執行者の指定など)
(3) 身分に関すること(認知や未成年後見人の指定など)
2.遺言を残した方がいいケース
遺言書は、愛する家族に残す最後のメッセージであると同時に、遺言書があることで遺産分割協議を省略することが出来るので、争族を未然に防ぐ最良の手段。下記等に該当する方は、遺言書を残しておくことをお勧めしています。
▶ 財産の大半が不動産である
▶ 相続人同士が不仲である
▶ 推定相続人が認知症、意思能力に問題ある
▶ 推定相続人が音信不通、失踪している
▶ 推定相続人が配偶者と先妻の子である
▶ 推定相続人が配偶者と兄弟姉妹(第3順位)
▶ 特定の相続人に継がせたい財産がある
▶ 取引相場のない株式を保有する同族会社
▶ 義妻など、法定相続人以外の人に渡したい
▶ 内縁の配偶者がいる
3.遺言の形式は3タイプ
遺言の方式には、3タイプ(普通方式)があります。このうち、皆さんがよく耳にする「遺言」は、主に【自筆証書遺言】【正公証書遺言】の2つです。この2つの比較は、以下の通りです。
【自筆証書遺言】
遺言する人が、全文を紙に手書き記す遺言書のことです。最低限の紙、ペンと印鑑だけでもあれば、誰でも気軽に作成することができますが、パソコンやワープロ、代筆は無効となります。(※だだし、民法改正により財産目録については自筆でなくても可となりました)厳格な要件があり、わずかな不備で無効になる場合があるため細心の注意が必要です。
※2020年7月10日 自筆証書遺言に関するルールが変わりました。法務局に預けることで、紛失、偽造や家庭裁判所の検認作業が必要なくなります。
【公正証書遺言】
公証役場において、遺言者の口述をもとに公証人が作成します(公証役場へ行けない場合は、公証人に病院や自宅出向いてもらうことも可能)。 公証人が法律の規定どおりに公正証書として書類を作成し、原本が公証役場に保管されるので、紛失や偽造の心配がありません。ただし、証人2人以上の立ち会いが必要であったり、手間と費用がかかることが難点です。
■公正証書遺言について▶▶詳しくはこちら
(日本公証人連合会HP)
【秘密証書遺言】
秘密証書遺言は公証役場で手続きをしますが、遺言内容は公証人に知られずにできるので、絶対に亡くなるまでは秘密を守りたいという場合に利用されています。
遺言 | Q&A
➡ こちらから
(日本公証人連合会HP)
4.相続人の「遺留分」に注意
遺産を誰に、どのように遺すかは原則として遺言者の自由ですが、相続人には最低限財産をもらえる権利として「遺留分」が法律で認められており、それを侵害しないように注意が必要です。遺言書等で遺留分を侵害された相続人は、他の相続人や遺贈を受けた人に、遺留分が侵害されたことを知った日から1年以内に「遺留分減殺請求」を起こして侵害分を取り戻すことができます。
【POINT】
子どものいない夫婦の場合、推定相続人が配偶者(相続分3/4)と兄弟姉妹(相続分1/4)となります。兄弟姉妹には遺留分が無いので(下記【遺留分の割合】表参照)、「配偶者に全て相続させる」と遺言を残しておくことで相続分を主張されること防ぐことができます。
★遺留分減殺請求に関しては民法改正によって、遺留分算定方法についての見直しがなされました。
5.付言事項
遺言者が遺言書に、相続人等への感謝の気持ちや分割にいたる自身の思いを込めて残す言葉です。付言は、遺言書に必ず残さなければいけないものではありませんが、遺言者の気持ちが表されていることにより遺された相続人間の紛争予防に大きな役割を果たしており、重要な記載事項です。付言には、決められた形式がありませんので、遺言者の本人の個性がそのまま表現されます。
■付言の例
長女○○は、30年にわたり献身的に私の介護をしてくれました。私は、長女○○の介護に本当に感謝しています。この長女○○の労に報いるために、このような遺言書を作りました。長男■■、二女▲▲には、私のこの気持ちを理解してほしいと思います。また、これからも兄妹仲良くお互い助け合いながら暮らしてください。